リラックスと集中



集中するにはどうすればいいんですか?

この問いは、すごく多くいただきます。

集中力を高めたい。
ミスを減らしたい。
大事な場面で力を発揮したい。

そのために

呼吸法
ルーティン
メンタルトレーニング

さまざまな方法が語られています。

ただ、ここに一つの誤解があります。

多くの人は
集中することばかり考えている。

どうすれば集中できるのか。
どうすればゾーンに入れるのか。

しかし、

本題は
集中しようとしても、なかなか集中できない
というところにあります。

むしろ、集中しようとすると
身体は無意識に力みます。

肩が上がり、
呼吸が浅くなり、
視野が狭くなる。

それでは
体が硬直して持ちません。

集中とは、
力を入れて作るものではないからです。


集中しやすい人の特徴の一つに、
オートテリックな状態があります。

その行為自体が楽しい。

だから
やり始める前から、

そのことを考えているだけで
すでに集中状態に近いところにいます。

努力して集中しているのではなく、

気づいたら集中している。

そんな状態です。


私の審判時代の話です。

高校野球では、
スタンドから大歓声が湧き起こります。

あの独特の空気に
武者震いがしたこともありました。

一方で、

社会人野球の都市対抗では
大音響の応援が鳴り響きます。

しかし、

審判をしているときは
不思議と緊張しない。

むしろ
自然と集中している。

なぜか。

集中しようとしていないからです。


これは日常でも同じです。

家で一人で勉強すると、
すぐ横になりたくなる。

眠くもなる。

ところが、

騒がしいカフェや
ファミレスでは、

驚くほど
長時間仕事が捗ることがあります。

環境が変わると
集中状態が生まれる。

つまり、

集中は意志だけで作れるものではありません。

環境や状態の中で
自然と生まれるものです。


試合の中でも
集中はずっと続いているわけではありません。

野球で言えば、

インプレイ → リラックス → インプレイ → リラックス

この繰り返しです。

プレーが始まれば
一瞬で判断しなければならない。

しかし
プレーが切れれば
身体は自然と緩む。

この切り替えがあるから、
集中は持続します。

ずっと力を入れていたら
体が硬直して持ちません。


だから多くの選手は
プレーの合間に

深呼吸をする。
帽子に触れる。
バットを整える。

そうした
ルーティンを持っています。

ただし、

ルーティンは
長ければいいわけではありません。

私の審判時代でも、

あまりに間が長いと
対戦相手から不満が出たり、
審判から注意されることがあります。

そうなると、

選手の意識は
プレーから離れてしまう。

ルーティンが
逆に集中を乱してしまうのです。

ルーティンの本質は、

時間を使うことではありません。

リラックスして
次のプレーに戻るための
短いスイッチです。


もし途中で

予期せぬ出来事が起きて
感情が揺れることがあったとしても、

このリズムを
身体に染み込ませておけば大丈夫です。

大切なのは、

無理に気持ちを戻そうとすることではありません。

次のインプレイの前に、
リラックスから始めること。

深く息を吐く。
身体の力を抜く。

そこから
次のプレーに入っていけばいいのです。

試合の中では

ミスジャッジ
エラー
思わぬ判定
流れの変化

想定外のことは必ず起きます。

そのたびに
感情に引きずられていては
集中は続きません。

だからこそ

インプレイ → リラックス → インプレイ → リラックス

このリズムを
身体に覚え込ませておくことが大切です。

ただし――

これを
ナチュラルに行えるようになるまでには、

相当な訓練が必要になることもあります。

頭で理解するのと、
本番でできることは
まったく別だからです。


集中を保とうとするのではありません。

何度でもリラックスに戻れること。

その結果として
人は深く集中していくのだと思います。


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