ルーティンの決め方

 
ルーティン。

生活の習慣、縁起担ぎ、インターバルの過ごし方、構える前の仕草。

無意識に行っているルーティンもあれば、意識的に取り入れているルーティンもあります。

「自分にはルーティンなんてない。」

そう思っている人もいるかもしれません。

しかし、客観的に見てみると、いつも同じ動作でプレーに入っていたり、同じ道を帰っていたり、お風呂で同じ順番に体を洗っていたりと、実は多くの人が無意識のうちにルーティンを持っています。

それによって自然とリラックスし、ナチュラルな状態で生活し、プレーしているのです。

一方で、意識的にルーティンを作る人もいます。

打席に入る前の動作、深呼吸、構え方、ボールをつく回数など、自分なりに意味を持たせて取り入れている選手も多いでしょう。

どちらにも共通していることがあります。

それは、ルーティンを乱されると、少なからず心が揺れるということです。


先日、NPBファーム公式戦のソフトバンク対阪神を視察しました。

僕はその時まで知らなかったのですが、その日の昼にソフトバンクの中村晃選手が今季限りでの引退を表明し、その夜の試合でした。

最終回。

中村晃選手が代打で登場しました。

初球を迎える前、投手との呼吸が合わず、一度タイムを要求。

タイムが認められると、間を引き延ばすことなく、約3秒ほどでスッと打撃姿勢に入りました。

そして次の一球を鋭く弾き返し、レフト前ヒット。

小柄な体から放たれた力強いインパクト音が、今でも耳に残っています。

スポーツメンタルコーチとして印象的だったのは、その一連の流れでした。

タイムを取ることが目的ではない。

自分が最も投球を待ちやすい状態を作ること。

長年積み重ねた経験が、体に自然と染み込んでいることが伝わってきました。

さらに、投手よりも先に打撃姿勢へ入ることで、自然と主導権を握っているようにも感じました。


ルーティンの目的


ルーティンの目的は何でしょうか。

集中するため。

リラックスするため。

気持ちを切り替えるため。

人によって答えは違うと思います。

しかし、共通しているのは、より良いパフォーマンスを発揮するための手段であるということです。

ここを忘れてしまうと、本末転倒になります。

ルーティンの動作をこなすこと自体が目的になってしまうのです。

試合にはルールがあります。

決められた時間があります。

その時間を超えてまで自分の動作にこだわれば、審判から注意を受けたり、急かされたりすることもあるでしょう。

そうなれば、心を整えるためのルーティンが、逆に心を乱す原因になってしまいます。


決め方は人それぞれ


無意識層に近い形でルーティンが身についている人は、無理に作り変える必要はないでしょう。

一方で、意識的にルーティンを作る必要がある人は、試合の流れに自分が自然と融和していくイメージで組み立てていくことが大切になります。

ゴルフのプリショットルーティンは、他競技でも参考になる、とても良いお手本だと思います。

動作そのものは競技によって異なりますが、トッププロは計らずとも、どのショットでもほぼ同じ時間でプリショットルーティンを終えられるよう、何度も繰り返し訓練しています。

ルーティンは、長くすれば良いものでも、複雑にすれば良いものでもありません。

自分が最もナチュラルにプレーへ入れる形を見つけることが大切なのです。


予備のルーティンも準備しておく

もう一つ大切なのは、予備のルーティンを準備しておくことです。

天候や試合展開などによって、審判からスピードアップを求められることがあります。ルール内であっても、いつものルーティンが制限される場面は少なくありません。

高校野球では、試合展開によって素振りも十分にできないまま打席に立つこともあります。

そんな時のために、短い予備動作や呼吸法など、限られた時間でも自分をナチュラルな状態へ戻せるルーティンを準備しておくことも必要です。

ルーティンは一つだけではありません。

状況に応じて使い分けられることも、再現性の高いパフォーマンスにつながっていきます。


大切なことは、心の揺れに気づくこと


ルーティンの動作を乱された時。

あるいは、自分で乱してしまった時。

まずは、「今、自分の心が揺れている。」ということに気づくことです。

そして、正規の手続きを踏んで元の状態に戻し、もう一度やり直す。

大切なのは、ルーティンそのものではありません。

ルーティンを通して、自分をナチュラルな状態へ戻せるかどうか。

そこに、ルーティンの本当の価値があるのだと思います。


現在、1on1では、試合中のルーティンだけでなく、試合前や日常生活の習慣まで含めて、その選手に合った「再現性の高い準備」を一緒に整理しています。

ルーティンは、人の真似をするものではなく、自分自身の特性に合わせて育てていくものです。

だからこそ、自分では気づきにくい部分を対話の中で整理し、大舞台でもナチュラルな自分でいられる状態を一緒につくっていきます。


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