父が選ばなかった道

 

昨日、7月20日は父の命日です。

毎年この日になると、自然と父のことを思い出します。

僕がコーチングを学び始めたのは、2015年にサハラマラソンを走り終えた後でした。

当時は自分のスタイルに限界を感じていて、周囲に勧められたことがきっかけです。

もちろん、それを仕事にしたいという気持ちはまったくありませんでした。

ただ、「教えない」というスタンスに強く惹かれ、気づけば学びを深めていました。

そして2017年。

福岡県・脇田温泉で開催された自己基盤合宿に参加します。

そこで初めてお会いしたのが、近藤真樹コーチでした。

ご挨拶の際、ほんの2〜3分お話ししただけだったにもかかわらず、真樹さんはこう言われました。

「あなたは、お父さんの影響が大きいの。しっかりと、あなたのコーチを介してお父さんと向き合いなさい。」

ほんの2〜3分の会話でしたが、会ってすぐにそこまで感じ取っていただいたことで、それまでの外側を扱うコーチングだけではなく、人の内側に興味を持ち始めました。

僕は一人息子です。

すごく可愛がられ、甘やかされて育ちました。

欲しいものは何でも買ってもらいました。

反面、とても厳しい父親でもありました。

56歳になった今でも、うっすら覚えている出来事があります。

幼稚園の頃、水銀体温計が42℃を指すほどの熱を出したことがありました。

母は休ませようとして家にいました。

8時半交代の24時間勤務を終えた父が朝方帰ってくると、

「なんで学校行っとらんとか?」

と聞き、母が理由を説明しました。

すると父は、

「何かそんくらいで、早よ学校に行かんか!」

と言いました。

そして僕は学校へ行きました。

そこから高校3年生まで無欠席です。

大学では野球の試合でも公休はなく、休みは休みでしたので、その記録は途絶えました。

だから今でも、ズル休みはできても、どのくらい具合が悪ければ休んでいいのか分からないという悩みを持ち続けています。

父が厳しく教えたのは、

嘘をつかないこと。

盗みをしないこと。

休まないこと。

そして、やり始めたことは最後までやり通すこと。

想像を絶するようなヤンチャな子でしたが、その四つ以外は、どんなことをして帰ってきても「ワハハ」と笑い飛ばすような豪快な父親でした。

母は泣いていましたが。

社会に出ると、世の中は少しずつ変化し、僕自身も現状維持ではなく変化を選ぶ側の人間になっていました。

何でも買ってくれたり、行きたいところには行かせてもらったり、味方がいなくなった時には全力で応援してくれたり、僕の友人まで助けてくれたり。

父には感謝してもしきれません。

その一方で、会社を辞めることだけは違いました。

安定を捨てることだけは、怪訝な表情で首を縦に振ることはありませんでした。

僕が32歳の時、アメリカの審判学校ショートコースへ行き、本格的に挑戦したいと思ったことがあります。

その時は、僕の思いも十分には伝わっていなかったのでしょう。

結局父は、僕を目の届くところに置いておきたかったのだと思います。

そこからいろいろな出来事があり、約8年後、僕が41歳の時に父は人生を終えました。

父が亡くなってからも、僕の中には父から受け継いだ価値観が色濃く残っていました。

コーチングを学び、サハラマラソンを走り、自分探しに奔走する中、真樹さんからもう一つ印象的な言葉をいただきました。

「これから時には、お父さんが選ばなかった方を選びなさい。」

その言葉を意識するようになってから、少しずつ選択が変わっていきました。

会社を辞めて独立してみる。

途中で休んでみる。

見栄を張ることをやめてみる。

情に負けて無理をしないようにしてみる。

場面場面で、父なら選ばなかったかもしれない選択を、自分の意思で選ぶようになりました。

すると、不思議なくらい肩の力が抜けました。

生きることが少し楽になりました。

背負わなくていいものまで背負っていたことに、少しずつ気づいていきました。

もちろん、父を否定したわけではありません。

僕は好き放題させてもらった反面、肝心な部分では父が敷いたレールの上を歩いていたのです。

一度手放した、お人よしで見栄っ張りな部分。

情の深さ。

忍耐強さ。

続ける力。

それらを今度は、自分を苦しめるためではなく、自分のために使い、そして人を助けるために使えるようになりたいと思うようになりました。

一度手放したものを、自分の強みに変えて、これから先を歩んでいきたい。

今、僕はフローについて学びを深めています。

そして、自分自身が体験したインナーチャイルドとの向き合い方や、親と子はそれぞれ別の人生を歩む一人の人間であるということも、少しずつ学び続けています。

父を否定するのではなく、受け継いだものを自分らしい強みに変えていくこと。

それが、僕にとって「本当の自分へ還る」ということなのかもしれません。

そして僕は、本当の自分へ還りながら、父から授かったものも強みに変えられるよう、これからもしっかり歩んでいきます。

そんな経験や学びを、スポーツの世界だけでなく、一人でも多くの方へナチュラルに届けられるよう、これからも活動していきたいと思っています。


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