スポーツの世界では、よく「自信」という言葉を使います。
「もっと自信を持って」
「自信を持ってプレーしよう」
「結果が出て、自信がついた」
私自身も、何度も耳にしてきた言葉です。
では、そもそも自信とは何なのでしょうか。
自信は、本当に「ある」「ない」の二択なのでしょうか。
私は、自信には**「質」がある**と考えています。
そして、その違いを見ていくと、競技中に自信が大きくなったり、小さくなったりする理由も見えてきます。
誤った自信
一つ目は、**「誤った自信」**です。
自分の力や現在地を、実際以上に大きく捉えている状態です。
「自分ならできる」
「自分は大丈夫」
「負けるはずがない」
そう思うこと自体が悪いわけではありません。
しかし、その自信が事実ではなく思い込みだけによってつくられているとしたら、現在の自分を正しく見ることが難しくなります。
自分を低く見積もることだけが、現状を見誤ることではありません。
自分を必要以上に大きく見ることもまた、正しい現状把握から離れていきます。
競技に向き合うとき、大切なのは、自分を大きく見せることでも、小さく見ることでもありません。
今の自分は、どこにいるのか。
まず、事実を受け止める。
そこが、本当のスタートラインになります。
条件付きの自信
二つ目は、**「条件付きの自信」**です。
試合に勝った。
いいプレーができた。
記録が伸びた。
周囲から評価された。
すると、自信が大きくなる。
反対に、
試合に負けた。
ミスをした。
思うようなプレーができなかった。
評価されなかった。
すると、自信を失っていく。
つまり、起きている現象によって上がり、現象によって下がる自信です。
もちろん、結果や成功体験から得られる自信を否定する必要はありません。
うまくいった経験が、その後の大きな力になることもあります。
ただ、スポーツでは同じ状態が永遠に続くことはありません。
調子がいい日もあれば、悪い日もある。
勝つこともあれば、負けることもある。
できることもあれば、突然できなくなることもあります。
人は、生身の人間です。
だからこそ、現象だけを自信の根拠にしていると、起きていることに合わせて、自分への信頼まで大きく揺れ動くことになります。
現象と、自分を切り離す
ここで大切にしたいのが、
「起きている現象」と「自分という存在」を切り離して見ることです。
ミスをした。
これは、起きた事実です。
しかし、
「だから自分には力がない」
というところまでが事実とは限りません。
試合に負けた。
これも事実です。
しかし、
「だから自分はダメな選手だ」
となれば、すでに起きた現象と自分自身が結びついています。
逆も同じです。
試合に勝ったから、自分はすごい。
結果が出ているから、自分には絶対的な力がある。
それもまた、現象と自分を結びつけているのかもしれません。
成功も失敗も、勝利も敗北も、好調も不調も、そのときに起きている一つの現象です。
現象を無視するのではありません。
むしろ、きちんと見る。
事実として受け止める。
そのうえで、
今、何が起きているのか。
今の自分は、どこにいるのか。
ここから、自分は何を選ぶのか。
を見ていきます。

無限の自信
三つ目を、**「無限の自信」**と呼びます。
これは、
「絶対にできる」
と思い込むことではありません。
何が起きても不安にならないことでもありません。
いつでも堂々としていることでもありません。
ましてや、揺れない人間になることでもありません。
人は揺れます。
自信がなくなることもある。
怖くなることもある。
迷うこともあります。
それらをなくす必要はないと、私は考えています。
大切なのは、
揺れている自分に気づけること。
そして、起きている現象を事実として受け止め、再び自分に戻ってこられることです。
結果が自分の価値を決めるのではない。
ミスが自分という人間を決めるのでもない。
成功したから価値が生まれるわけでもありません。
現象と自分を切り離したところにある、
自分という存在そのものへの信頼。
私は、そこに「無限の自信」という言葉の意味を感じています。
自信をつけるのではなく、自信の質が変わっていく
「自信をつける」という言葉があります。
もちろん、それも一つの考え方です。
ただ私は、何かを外から足して、自信のある人間になっていくことだけが答えだとは考えていません。
自分の中で起きていることに気づく。
思い込みに気づく。
現象と自分を切り離してみる。
事実を受け止め、自分の現在地を見る。
そして、自分で次を選ぶ。
そうした経験を重ねる中で、
自信の「量」が増えるというより、自信の「質」が変わっていく。
そんなことが起きるのではないでしょうか。
だから、無理に自信を持とうとしなくてもいい。
自信がない自分を、どうにかしようとしなくてもいい。
今、何が起きているのか。
そこに気づくところから始めればいい。
大舞台でこそ、大胆に。
大舞台では、さまざまな現象が起こります。
緊張する。
怖くなる。
身体が思うように動かない。
それまでできていたことが、できなくなる。
反対に、自分でも驚くほど自然に身体が動くこともあります。
どちらも、その瞬間に起きている現象です。
大切なのは、完璧な状態をつくることではありません。
揺れている自分にも気づきながら、何度でも自分に還ってくる。
そして、その瞬間の自分で、次の一歩を選ぶ。
現象ではなく、在り方から生まれる自信。
その土台があるからこそ、
大舞台でこそ、大胆に。
自分を表現していけるのだと、私は考えています。
参考文献
ジョセフ・ペアレント 著
『禅ゴルフ メンタル・ゲームをマスターする法』
※本稿の「誤った自信」「条件付きの自信」「無限の自信」という自信の捉え方については、上記文献を参考にしています。その考え方をもとに、私自身のスポーツメンタルコーチングにおける「現象」「事実」「現在地」「在り方」という視点から再構成しています。



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