夏の初戦

 

3000試合以上、野球の審判をしていると、エースを温存したまま初戦敗退というケースは少なくありません。

後半戦の連投を見越した起用は、今も昔も自然な考え方です。

チーム事情や選手層によって一概には言えませんが、高校生にとって初戦は独特の緊張感があります。

夏の大会は、一度負ければ終わり。

だからこそ、多くの選手は「競技を楽しもう」と思っても簡単にはいきません。

結果を求められ続ける報酬型のメンタルでは、その場で気持ちを切り替えることは容易ではないからです。

だから私は、「楽しもう」と伝えるよりも、やるべき準備をやり切った上で、その後どうプレーしたいのかを具体的にイメージしておくことや、日頃から自分自身への問いかけをポジティブなものにしておくことを大切にしています。

格下相手に終盤まで得点を奪えず、何とか辛勝するケースや、そのまま敗れてしまうケースも少なくありません。

低反発バットへの変更やDH制、タイブレークなど、野球のルールも少しずつ変わっています。

ルール変更を不利と捉えるのか。

それとも、どんなルールでも対応できるように準備をしておくのか。

その考え方一つで、試合への向き合い方は変わってきます。

もちろん、強豪校のようにエース級の投手を3〜4人擁しているチームには当てはまらないケースもあるでしょう。

それでも私は、初戦だけはチーム全体に安心感を与えるためにも、一イニングでも、あるいは立ち上がりだけでも、ベストメンバーで臨む価値があると考えています。

「今日はこの9人で戦う。」

その安心感は、技術以上にチーム全体へ伝わります。

逆に、「大丈夫かな」という不安も、驚くほど相手や仲間に伝わってしまうものです。

だから私は、不安を直接なくそうとはしません。

選手自身が自ら気づけるような仕組みをつくり、安心して挑戦できる状態を整えることを大切にしています。

大舞台では、技術や戦術だけでは勝負は決まりません。

安心感が思い切りの良さを生み、その思い切りが、本来の実力を引き出してくれるのだと思います。


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