プレッシャーの正体

 
プレッシャーの要因は、比較や分析、評価など、突き詰めれば意外とシンプルです。

しかし、その現象がシンプルだからといって、簡単に抜け出せるわけではありません。

今回は、その入り口のひとつである「情報過多」について考えてみます。

人類の進化とともに、スポーツの世界も進化してきました。

先人たちが積み重ねてきた知見や、テクノロジーの発達によって、体・技・心に関する情報は以前とは比べものにならないほど手に入るようになりました。

知識が増えることは楽しいものです。

検索すれば、クリックひとつで何万、何億という情報が目の前に現れる。

向上心のあるアスリートほど、

「もっと知りたい。」

「全部自分のものにしたい。」

そう思うのではないでしょうか。

しかし、人の記憶力や処理能力は、その情報量に追いついているでしょうか。

成長のため。

成功するため。

チームのため。

その純粋な向上心が、知らないうちに自分自身へプレッシャーをかけてしまっていることがあります。

これは、情報が悪いという話ではありません。

大切なのは、情報との付き合い方です。

どんな情報を取り入れ、どこで立ち止まり、何を手放すのか。

その選択こそが、自分自身を守り、本来のパフォーマンスにつながっていくのだと思います。


例えば、司令塔の役割を担っているプレーヤーは、膨大な情報を整理しながら試合の準備をしていることでしょう。

自信を持って積み上げてきたデータや知識を引っさげて臨んだ試合。

しかし、

開始直後にカウンターを受ける。

想定していた選手が思うように動けない。

悪天候でゲームプランが崩れる。

残り数分で逆転される。

「どうしよう、どうしよう……。」

時間だけが過ぎていき、準備してきたデータや知識ばかりが頭の中をぐるぐる回り、どうしていいかわからなくなる。

プレッシャーとは、相手がつくるものではなく、自分の中で情報を処理しきれなくなったときに大きくなるものなのかもしれません。

焦り、怒り、諦めという負のメンタルサイクルにはまり、そのまま試合が終わってしまう。

そんな話は少なくありません。


上記したように、情報が豊富なことは非常にありがたいことで、強みになるはずです。

しかしながら、

「どうしよう、どうしよう……。」

となってしまっては、一転して弱みになります。

これは、新しい脳(大脳新皮質)を使って試合をしている典型例です。

知識や思考でプレーしているから、体が反応しません。

新しい脳は、練習で使い、あらかじめ染み込ませておくものです。

試合では、感覚や直感などの古い脳(大脳旧皮質)を使えるようになることです。

データや知識を強みにするには、それらを体に染み込ませることです。

データや知識で試合をコントロールするのではありません。

データや知識に、体が自然と反応できる状態をつくることです。

そうすることで、プレッシャーの中でも体は自然と反応できるようになります。

相手の動き、ボールの軌道、守備位置、天候や環境。

どんな状況でも直感的に反応できる準備ができているプレーヤーほど、勝つ確率はぐんと上がります。

競技だけが人生ではない。

だけども、壮大な人生の中で出会った競技に、今、この刹那に全力を注ぐ。

長く時間をかければいいわけではありませんが、常に競技のことを考えている人の方が、勝つ確率は上がります。


教えすぎ、目移りしすぎ

特にアマチュアでは、試合中や練習中を問わず、How to を教えすぎている場面をよく目にします。

小学校から大学まで競技を続けたとしても、その期間はわずか十数年です。

その限られた時間の中で、指導者、SNS、YouTube、トップアスリートなど、さまざまな情報に触れます。

真面目で勤勉な日本人だからこそ、

「せっかく教えてもらったのだから。」

「〇〇選手はこう言っていた。」

「あの指導法も取り入れたい。」

と、すべてを取り入れようとしてしまう。

しかし、情報が増えすぎると、どれを信じ、どれを選べばいいのかわからなくなります。

その迷いが、プレッシャーへと変わっていきます。

そして、自分のプレーよりも知識や正解を探すことに意識が向き、本来の力を発揮できないまま競技人生を終えてしまう選手も少なくありません。


プレッシャーは、必ずしも悪いものではありません。

もし、プレッシャーを感じているとすれば、それは、その試合、その競技、その仲間を大切に思っている証でもあります。

だからこそ、プレッシャーをなくそうとする必要はありません。

情報過多によって生まれる迷いや焦りと、プレッシャーそのものは別物です。

プレッシャーを正しく理解し、強み使いできる状態をつくること。

それが、本来のパフォーマンスにつながっていきます。


情報が多いことを強みに変える。

試合中、揺れることも多々あるでしょう。

ひとつは、上記したように、

データや知識を染み込ませ、状況に反応できるようにすること。

もうひとつは、

「自分はこうやる」と、一つを選択すること。

それが、プレッシャーの中でも迷わない自分をつくります。

そのために、実際に起こったことや仮説をもとに対話を重ねながら、状況を具体的にイメージし、自分に必要な情報と手放した方がいい情報を整理するサポートをしています。


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