小学生の頃。
千代の富士の新大関初日。
相手は、僕が大好きだった“サーカス相撲”で金星を量産していた
栃赤城との一番でした。
小さい体で真っ向勝負する千代の富士関も好きでしたし、
何を仕掛けてくるか分からない栃赤城関も好きだった。
子どもながらに、
胸が高鳴る取り組みでした。
しかし結果は——
掬い投げで、呆気なく。
土俵の時間は、ほんのわずかでした。
その時、解説者が言いました。
「新大関の初日は土がつくと言われています」
昇進して最初の一番は、なぜか負けることが多い、と。
子どもだった僕は、
その言葉の意味を深く理解していたわけではありません。
ただ、
その一言が、妙に記憶に残っています。
昨日まで関脇だった力士が、
今日から大関になる。
番付が変わる。
呼び名が変わる。
周囲の目も変わる。
けれど——
一日で、人が変わるわけではありません。
急に別人のように強くなるわけでもない。
新大関という立ち位置は、
それまで想像を絶する鍛錬や、
幾度もの敗戦や、
さまざまな試練を乗り越えた結果です。
そこに至るまでの歩みは、本物です。
ただ、
昇進したことと、
その瞬間にさらに強くなることは、別の話。
昨日の延長線上に、今日がある。
身体も、技も、心も、
急には変わらない。
立場が変われば、
期待も変わる。
「大関なんだから」
そんな空気が、
土俵の外に漂うこともある。
それでも、
土俵に上がれば向き合うのは目の前の一人。
やることは変わらない。
積み重ねてきたことを、
そのまま出すだけ。
新大関の初日に土がつく。
それは弱さではない。
昨日までの努力が、
急に消えるわけではない。
ただ、
昨日の続きが今日にあるということ。
強さは、
肩書きの上に乗るものではない。
積み重ねの上に、
静かにある。
📩 無料メール講座のご案内
日常の中で、少し立ち止まる時間として
受け取っていただけたら嬉しいです。
体験セッション・お問い合わせは
こちらよりご覧いただけます。

この記事へのコメントはありません。